2026年のデータから分かるのは、かっぱ寿司の店舗網が単純な縮小局面にあるわけではない、ということです。ただし、閉店が続いている地域や、競合と比べて店舗が少ない地域では、利用者が「減った」と感じるのも不思議ではありません。
日本ソフト販売が2026年9月15日に公表した「2026年版 寿司チェーンの店舗数ランキング」では、国内のかっぱ寿司は2025年7月の296店舗から、2026年7月には301店舗へ増加しました。増加率は1.7%です。一方、カッパ・クリエイトの2026年3月期決算資料では、同年度末の店舗数は299店舗と報告されています。集計時点や店舗数の把握方法が異なるため、数字は同一基準で比較する必要があります。
店舗数の推移をどう読むべきか
かっぱ寿司の店舗数を考える際は、全国の総店舗数だけでなく、出店・閉店の動きと地域ごとの分布を確認することが重要です。
- 2026年3月末:会社の決算資料では299店舗。
- 2026年7月:日本ソフト販売の調査では301店舗。
- 2026年9月:富山県射水市の「かっぱ寿司アイタウン射水店」が新規オープン。
- 2026年10月12日:大阪府の貝塚店・堺美原店、奈良県の奈良柏木店、和歌山県の和歌山店が閉店。
これらはカッパ・クリエイトの公式発表で確認できる動きです。新規出店がある一方、複数店舗が同じ日に閉店するケースもあるため、利用者の目には縮小が強く映ることがあります。
なぜ近所の店舗がなくなったと感じるのか
大きな要因の一つが、出店地域の違いです。店舗データの調査では、かっぱ寿司の出店地域は36都道府県とされる一方、スシロー・はま寿司・くら寿司は47都道府県に展開しています。
つまり、全国の総店舗数が増えていても、競合が多い地域や、かっぱ寿司の出店が少ない地域では、近所で見かける機会が限られます。自分の生活圏から店舗がなくなった経験と、全国規模で店舗数が減少しているかどうかは、分けて考える必要があります。
【業績悪化の真相】売上高は横ばいでも営業利益が急減した理由
店舗数の推移以上に深刻なのが、収益力の低下です。カッパ・クリエイトの決算短信によると、2026年3月期は売上高がほぼ横ばいだったにもかかわらず、営業利益が大きく減少し、最終損益は赤字に転落しました。
出典:カッパ・クリエイトの2024年3月期・2025年3月期・2026年3月期決算短信、および2027年3月期第1四半期決算短信。第1四半期は2026年4〜6月の実績で、通期実績とは期間が異なります。
1.原材料費・エネルギー価格・人件費の上昇
寿司チェーンは、魚介類、米、調味料などの食材を継続的に仕入れる必要があります。さらに、店舗の電気代、物流費、設備維持費、人件費も経営を左右します。
カッパ・クリエイトは2026年3月期の決算資料で、原材料・エネルギー価格の高止まりや人件費の上昇を、利益を圧迫した要因として挙げています。売上高が約732億円を維持しても、仕入れや店舗運営に必要な費用が膨らめば、営業利益は減少します。
特に注目したいのは、営業利益率です。2025年3月期の約2.0%に対し、2026年3月期は約0.7%まで低下しました。売上高の規模だけでは見えにくいものの、売上から本業の費用を差し引いて残る利益が、薄くなっていることを示しています。
2.節約志向の強まりと消費者の選択眼
会社側は、物価上昇による消費者の節約志向や、価格・品質に対する厳しい選択眼への対応が、想定した成果に届かなかったと説明しています。
低価格を求める消費者が増えれば、値下げや割引キャンペーンが集客に役立つ一方、客単価や利益率を押し下げる可能性があります。逆に値上げすれば、価格に敏感な顧客が競合へ流れるリスクが生じます。
かっぱ寿司にとって難しいのは、単に安さを訴求するだけでなく、価格に見合う品質や満足感を安定して提供しなければならない点です。これは特定の企業だけでなく、回転寿司業界全体が直面する課題でもあります。
3.売上が伸びても利益が残らない構造
売上高と営業利益を分けて見ると、業績悪化の輪郭が明確になります。
2026年3月期の売上高は前期からほぼ変わっていません。しかし、営業利益は約9億円減少しました。さらに、将来の収益性を慎重に検討した結果、固定資産の減損損失7億1,500万円を計上しています。対象には国内85店舗、海外2店舗、国内1工場が含まれます。
減損損失は、店舗の閉店数そのものを示す数字ではありません。将来得られると見込む収益などを踏まえ、保有する資産の価値を会計上見直したものです。したがって、「85店舗を閉店した」という意味ではありません。
2026年10月時点の最新動向
2026年10月28日時点で、会社のIRサイトに掲載されている最新の四半期決算短信は、8月12日発表の2027年3月期第1四半期です。売上高は前年同期比2.4%減、営業利益は黒字から赤字に転じました。
ただし、月次売上には回復の兆しもあります。10月5日公表の9月分データでは、全店舗の売上高は前年同月比105.7%、客数は103.6%でした。4〜9月の累計でも全店舗売上高は前年同期比100.4%です。
一方、累計の客単価は97.6%にとどまっています。客数が増えても、1人当たりの売上が弱ければ、利益の回復につながるとは限りません。月次の売上改善と、四半期決算での収益改善を区別して見る必要があります。
【スシロー・はま寿司・くら寿司と比較】かっぱ寿司が苦戦する理由
競合との差は、店舗数だけでなく、ブランドの認知度、出店網、顧客を引きつける仕組みにも表れます。
日本ソフト販売の2026年7月調査では、国内店舗数は次のようになっています。
- はま寿司:677店舗
- スシロー:667店舗
- くら寿司:557店舗
- かっぱ寿司:301店舗
同じ調査基準で見ると、かっぱ寿司は大手3チェーンより店舗網が小さく、最も多いはま寿司の半分弱です。店舗数が少ないほど、顧客が日常生活の中でブランドに接する機会も限られやすくなります。
スシロー:店舗網と集客力を両立
スシローは、国内店舗の拡大に加えて、商品開発や期間限定企画、海外展開にも力を入れています。運営会社FOOD & LIFE COMPANIESの月次資料では、2026年9月期の国内スシロー全店売上高が通期累計で前年同期比110.4%となりました。これはかっぱ寿司の数値とは対象期間や会計区分が異なるため、単純な利益比較には使えませんが、集客・販売面の勢いを把握する材料になります。
はま寿司:出店拡大と価格訴求
はま寿司はゼンショーホールディングスのグループ会社です。2026年7月の国内店舗数は677店舗で、前年同月から33店舗増加しました。
店舗網の広さに加え、手頃な価格を求める層に訴求できることが競争上の強みです。かっぱ寿司も値下げや生活応援価格などの施策を進めていますが、競合が広い出店網を背景に顧客を獲得しているため、価格だけで差をつけるのは容易ではありません。
くら寿司:食事そのものを体験に変える
くら寿司の特徴は、寿司を食べるだけではない体験づくりです。公式資料では、皿回収と連動した「ビッくらポン!」など、エンターテインメント性のある仕組みを継続的に強化していると説明しています。
ファミリー層にとっては、価格やネタの品質だけでなく、子どもが楽しめるかどうかも店選びの基準になります。かっぱ寿司もキャラクターやコラボ企画、食べ放題などを展開していますが、競合との違いを明確に伝え、再来店につなげられるかが課題です。
競争の本質は「安さ」だけではない
回転寿司業界では、原材料費や人件費の上昇に対応しながら、顧客に選ばれる理由をつくる必要があります。店舗数を増やすだけでは固定費が増えるリスクがあり、値下げだけでは利益が薄くなるおそれがあります。
かっぱ寿司に必要なのは、競合と同じ施策を追いかけることではなく、価格、商品、利便性、店舗体験の組み合わせで独自の魅力をつくることです。
【評判と口コミ】かっぱ寿司の評価はどう見るべきか
「かっぱ寿司はまずい」「昔より魅力がなくなった」といった印象を持つ人がいるとしても、それだけで全国の店舗やブランド全体を評価することはできません。口コミは店舗、来店時間、注文した商品、混雑状況によって大きく変わります。
実際に店舗を選ぶ際は、次のポイントを分けて確認すると判断しやすくなります。
- 価格と満足感: 会計額に対して、寿司やサイドメニューの内容に納得できるか。
- 商品と提供品質: ネタの状態、注文品の提供速度、品切れの有無など。
- 接客と店内環境: 混雑時の対応、清潔感、案内や会計のスムーズさ。
- 店舗ごとの違い: 同じチェーンでも、設備やスタッフ、立地によって利用体験が異なるか。
会社は2026年3月期に22店舗を改装し、注文専用の高速レーン、自動案内システム、セルフレジ、スマートフォン注文などの導入を進めました。これらは利便性と店舗の生産性を高める取り組みです。ただし、設備導入そのものが顧客満足度の改善を保証するわけではなく、実際の料理の品質や提供の安定性が伴うかどうかが重要です。
ブランドの信頼をめぐる過去の問題
かっぱ寿司を語るうえでは、2022年に発覚した営業秘密の不正取得・使用事件も無視できません。
元社長が、以前勤務していたはま寿司側の食材原価や仕入れ先に関する情報を不正に取得・使用した事件で、2023年5月には元社長に有罪判決が言い渡されました。さらに、2024年2月には法人としてのカッパ・クリエイトにも罰金3,000万円の判決が出され、同年10月の東京高裁判決でも一審が支持されました。
この問題は、企業統治やコンプライアンスに対する信頼を考えるうえで重大です。ただし、これを店舗数の減少や2026年の業績悪化の直接的な原因と断定できるデータはありません。収益の低迷については、会社が決算資料で説明しているコスト上昇や消費者の節約志向などと区別して考えるべきです。
【再建と今後の展望】コロワイドの戦略とかっぱ寿司の課題
かっぱ寿司の再建は、店舗数を増やすことだけでは進みません。既存店の収益改善、ブランドへの信頼、商品力、店舗運営の効率化を同時に進める必要があります。
運営会社のカッパ・クリエイトは、コロワイドグループの一員です。コロワイドの2026年3月期は、連結売上収益が3,000億90百万円、事業利益が125億2,700万円となりました。一方、グループ全体では業績が低迷したカッパ・クリエイトなどを中心に、減損損失の計上や繰延税金資産の取り崩しも行われています。グループ全体の規模や利益だけで、かっぱ寿司自身の収益力を判断することはできません。
再建に向けた3つのポイント
1.既存店の収益性を高める
会社は、顧客動向に合わせたメニューの見直しや価格施策、店舗改装、接客・調理技術の向上に取り組んでいます。新規出店だけでなく、既存店で安定して利益を確保できるかが、再建の土台になります。
2.省力化と顧客体験の両立
自動案内システムやセルフレジ、スマートフォン注文、AIを活用したシフト作成などは、業務効率化と人員配置の改善に役立つ可能性があります。大切なのは、コスト削減だけを優先せず、注文のしやすさや料理の提供品質も維持することです。
3.出店地域とブランドの魅力を見直す
会社は、大都市の駅前、郊外型商業施設・ロードサイド、新しい商圏でのポジション確立を出店の軸に掲げています。地域の需要に合った出店と、既存店の改装を組み合わせる戦略です。店舗数の拡大が目的化せず、それぞれの店舗が十分な集客と収益を生み出せるかが問われます。
【プロの結論】本当に見るべきは店舗数よりも収益力
かっぱ寿司の状況を判断する際、店舗数だけを見て「衰退している」「復活した」と結論づけるのは早計です。
2026年7月の店舗数調査では前年同月から5店舗増えていますが、2026年3月期の営業利益は大幅に減少し、2027年3月期第1四半期も営業赤字でした。一方、9月の月次売上高には前年を上回る動きが見られます。
今後、再建が進んでいるかを見極めるには、次の3点を継続的に確認するのが有効です。
- 店舗数の純増減: 新規出店だけでなく、閉店も差し引いた店舗網の変化。
- 既存店の売上と客数: 新店効果に頼らず、既存店舗が顧客を維持できているか。
- 営業利益と利益率: 売上が伸びるだけでなく、食材費・人件費などを差し引いて利益が残るか。
これらがそろって改善すれば、店舗数の増加が持続的な成長につながる可能性が高まります。反対に、店舗数が増えても利益が回復しなければ、再建が順調だとは判断できません。
【かっぱ寿司なぜ減った】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:かっぱ寿司は2026年に本当に減ったのですか?
A1:全国の店舗数が一貫して減少しているわけではありません。日本ソフト販売の調査では、2025年7月の296店舗から2026年7月には301店舗へ増加しました。一方、2026年10月には複数店舗の閉店が公式発表されており、地域や時期によって印象が異なります。
Q2:かっぱ寿司の業績が悪化した最大の理由は何ですか?
A2:会社の決算資料では、原材料・エネルギー価格の高止まり、人件費の上昇、物価高による消費者の節約志向などが挙げられています。2026年3月期は売上高がほぼ横ばいでも、営業利益が前期比62.9%減となりました。
Q3:かっぱ寿司はスシローやはま寿司より店舗数が少ないのですか?
A3:2026年7月の日本ソフト販売の調査では、かっぱ寿司が301店舗なのに対し、はま寿司は677店舗、スシローは667店舗、くら寿司は557店舗でした。同じ調査基準では、かっぱ寿司の店舗網は大手3チェーンより小規模です。
まとめ:今後の動向と失敗しないための判断基準
「かっぱ寿司はなぜ減った」と感じる背景には、実際の閉店、地域ごとの出店状況、競合チェーンの拡大、そして収益力の低下があります。しかし、2026年の公開データでは店舗数が増えた時期もあり、全国的な一方的縮小という見方は実態に合いません。
一方で、営業利益の大幅な減少や2027年3月期第1四半期の営業赤字は、経営再建がなお課題を抱えていることを示しています。9月の月次売上には改善が見られるものの、今後は利益率まで回復するかを確認する必要があります。
利用者にとっては、店舗数や評判だけで決めつけず、近隣店舗の営業状況、メニュー、価格、実際の口コミを確認するのが現実的です。企業の動向を追うなら、閉店情報だけでなく、新規出店、既存店売上、客数、営業利益をセットで見ることが、かっぱ寿司の現在地を正しく理解する近道です。 (出典: かっぱ寿司 なぜ減った(Yahoo!ニュース))